2009年8月20日木曜日

026 バリの運転事情(2)


I氏は、ウブドゥに長く住む日本人のおじさんである。名古屋の出身と聞いた。
わたしがバリに行き始めた1980年代には、すでにウブドゥ近郊に日本料理の店を出していた。運転免許について、彼から聞いた話しがおもしろかった。

I氏はバイクに乗っている。乗り始めるときに、免許をどうやって取ろうかと研究した。詳しいことは忘れたが、いろいろと方法があるのだそうだ。教習所に通うとか、個人指導を受けるとか、直接試験を受けるとか、そういうことだろうと思う。
それで、それぞれいくらかかるか、ということを試算した。いずれにしてもかなりかかる。それで、もうひとつのオプションを思いついた。つまり、無免許で通すことである。

無免許で捕まっても、おまわりさんにいくらか袖の下を払えばそれで処理できる。
毎回××ルピア払うとして、年に××回捕まるとして、と計算すると、このほうがはるかにコストベネフィットが高い、という結論に達し、それで免許を取るのをやめた、というお話しである。

彼はさらに、その後、皮算用よりも捕まった回数は少なく、大正解だったということを、真面目な顔で淡々と語った。

「それに、捕まっても、『わたし、インドネシア語できませ~ん』という感じで、日本語でわあわあ言ってると、相手も困って、しゃあないなあ、とタダで放免してくれるケースが多いから、さらにお得ですね」

すこし考えさせる行状ではあるが、とりあえず笑える。

わたしの経験をいうと、これまでに免許証の提示を求められたことは、ただ1度しかない。
なんでもない時に突然警官に止められて、「はい、免許証」と言われた。ところが、いつも携行していた国際免許証を見せると、驚いたことに「これは何だ?」と受け付けてもらえない。それで、だめもとで日本の免許証を見せたら「OK」ということになった。
国際免許というのは、いったい何だったのだろうか。それ以来、わたしも厳密には無免許で通している。

もうひとつ、運転で捕まったお話し。

夕日とサーフィンで有名なウルワツにひとりででかけてみた。
上り道が断崖の上で終わっていて、そこに大きな円形の広場があった。車をそこに止める。ほかの車は円周に沿うように無造作に止めてあって、まったく効率がよくない。わたしは、きちんと円周に直角に止めた。それがマナーというものだ。
そこから、マウンティンバイクに乗せてもらって、崖を降り、しばらく砂浜で遊んでもとの広場に戻ってみると、車の周りに人垣ができている。

なんだ、なんだ、と近寄ると、みんながはやし立てる。

「わあ、この車、止め方がよくないんだってー!」

人垣の中から、ひときわ気の弱そうな小柄な男性が出てきて、おずおずと説明をはじめた。

「ほかの車のように、円周に沿って止めなくてはいけない。あなたは、交通違反をした」
「あなたは、何ですか?」
「わたしは警官である」

確かに、それらしく黒い帽子をかぶっていた。いろいろと反論してみたが、この男は困ったようにもじもじするばかりで、一向らちがあかない。あきらめて、罰金はいくらかと聞くと

「10ドルである」

と、法外なことを言う。なにが10ドルだ、しかも、なんでルピアでなくてドルなのか! 頭にきたので、人垣に向かって

「この人は、ほんとうに警官か?」

と問えば

「わあ、そうだよー、そうだよー」

と返ってきた。あほらしくなって男を振り返り

「1ドルでどうだ」

というと、それでもよい、ということになり、ポケットから1ドル紙幣を出して払った。それでおわり。
それまでの人垣がくもの子を散らすようにいなくなって、当のお巡りさんも瞬く間に消えてしまった。
わたしは今でも、あれは偽警官でなければ私設警官だったと信じている。

あの時にも、そういえは免許証の提示は求められなかった。

教訓 : 車を駐車するときは、ほかの車と同じように止めましょう。


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